アートと出あう -10人の芸術家たち-

10人の芸術家たち大杉康伸
陶芸

10人の芸術家たち岡田和幽
銀線七宝

10人の芸術家たち川千惠子
粘土細工

10人の芸術家たち木下留子
糸工芸

10人の芸術家たち桑村大資
装飾金物

10人の芸術家たち中村さとみ
トールペイント

10人の芸術家たち丹羽名甫
墨アート

10人の芸術家たち本堀雄二
彫刻

10人の芸術家たち𠮷岡充
水彩画

大久保佳子 染色

山野草の美しさを型絵染で表現

岡山市万成の「桜みかげ石」の山元だった生家に、イサム・ノグチ氏が滞在。このことが大久保佳子さんが芸術家の道にあこがれたきっかけとなった。その後山岳会に入り、高山に凛として咲く山野草を描くように…。1985年には流郷由紀子氏の作品と出あい、師と仰ぎ型絵染の奥の深さを学んだ。鮮やかな原色よりも、淡いほのかな色で染められた暖簾やタペストリーなどの作品への評価は高く、個展開催を楽しみに待つファンも多い。

●プロフィール 独創的な作品をつくる染色作家。1998年の日本芸術栄誉賞、2007年全国手工芸コンクール毎日新聞社賞など受賞。アートクラフト展への出品や、個展開催などで創作活動を続けている

わたしの行きたい所
全国手工芸コンクール in ひょうご 毎日新聞社賞

大杉康伸 陶芸

かまどはん
竈飯

日々の暮らしに寄り添う器

 丹波市山南町の工房で日々作陶に励む陶芸家の大杉康伸さん。展示会や作品展などで耳にする使い手の声を作品に活かし、一つひとつ手仕事で生み出された「暮らしに寄り添う器」には、作り手の人柄が感じられる。「器なら料理を盛り付けた時、花瓶なら花を生けた時、互いを引き立てるものにしたい」。しっくりと手に馴染む使い勝手の良い作品はシンプルなデザインで飽きがこない。
 
●プロフィール
神戸市生まれ、丹波篠山市在住。1996年、岡山県備前陶芸センター入所。その後、備前焼の窯元で2年、伊賀焼の窯元で7年の修業を積んだ後、2006年に独立。丹波市山南町に築
 

岡田和幽 銀線七宝

長年に渡り第一線で活躍、後継者の育成にも注力

 生まれ育った宍粟市波賀町を拠点に銀線七宝作家として第一線で活躍し続けている岡田和幽さん。長年に渡り、兵庫県内各地で講習会や教室を開講するなど、伝統工芸の伝承に力を注ぎ、銀線七宝の発展に貢献してきた。 フランスのアンボワーズ城にて作品展、並びにビシ市・リモージュ市で日仏七宝技術交流会に参加するなど、その活躍の場は国内に留まらず海外においても高く評価されている。2020年12月に「手わざASSOCIATE関西」を発足。新たな挑戦が始まる。
 
●プロフィール 宍粟市波賀町出身、同市在住。銀線七宝瑠璃の会主宰。1980年に七宝師範免状を受く。2003年に作品「共存」が東京都知事賞受賞。10年には兵庫県功労者表彰を受賞するなど、数々の受賞歴を重ねている
okada2

春琴

川千惠子 粘土工芸

kawa2

大かつらのいぶき
徳島現代クラフト協会全国公募展
文部科学大臣賞 受賞

粘土工芸に注がれる気迫

豊岡にて、粘土工芸・スタジオ千惠を主宰する粘土工芸作家の川千惠子さん。地元但馬の自然をテーマに作品を制作。2010年「徳島現代クラフト展」では、『大かつらのいぶき』が文部科学大臣賞を受賞。その作品からは自身の持てるエネルギーのすべてを注ぎ込んだ気迫が感じられる。

●プロフィール 豊岡市生まれ、同市在住。粘土工芸と出合って約38年。粘土工芸の講師資格を取得後は地元豊岡を拠点に数多くの教室で指導。県立円山川公苑美術館にて個展を開催した他、NHKにも出演

木下留子 糸工芸作家

捨てられる古布を美しい作品へと再生

一級和裁技能士として長年の経験を活かし、本来ならば処分されてしまう古布を再生し、美しい作品へと甦らせる糸工芸作家の木下留子さん。 2015年には、その作品のひとつ『再縫』が全国手工芸コンクール in ひょうごにて文部科学大臣賞を受賞。数千枚に及ぶ3cm四方の小さな古布を手縫いで一針一針縫い合わせられた大作だ。

●プロフィール 大分県出身、神戸市在住。一級和裁技能士として45年以上和裁の仕事に携わる傍ら、「ゴミ箱に捨てられてしまうようなボロ布に刺し子やパッチワークを施すことで、再び新しい命を吹き込む」ことをコンセプトとして創作活動を続けている
kinoshita2

全国手芸コンクール in ひょうごにて
文部科学大臣賞を受賞した作品 『再縫』

桑村大資 装飾金物​

フランスのロワール渓谷に建つ、シャンボール城をモチーフに制作されたレリーフ。鎚目によって、大勢の人力によって築かれた城壁風合いを表現

使い手へと伝わる金属の温もり

ロートアイアンと呼ばれる技法を使った鉄の装飾を中心にステンレスや真鍮など、さまざまな素材を使った作品を手掛けている西区伊川谷の「金工舎climb」代表の桑村大資さん。その作品からは鉄の持つ硬く冷たいイメージとは対照的に、作り手の温もりが感じられる。 「金属にはさまざまな表情がある」と桑村さん。「まだ見たことのない金属の表情を提案していきたい」と常に新しいことに挑戦している。

●プロフィール 1974年神戸市生まれ、同市在住。京都精華大学を卒業後、2003年、神戸市西区に「金工舎climb」を立ち上げ、鍛冶職人として独立。現在は2人のスタッフとともに店舗や住宅などの鉄装飾やレリーフ、モニュメントなどを手掛けている

中村さとみ トールペイント

トールペイントで暮らしに花を

阪急神戸線、武庫之荘駅からほど近い場所にアトリエ「STUDIOシャトル」を構えるトールペイント作家の中村さとみさん。トールペイント発祥の地、ヨーロッパで学んだ経験が活かされたその作品は、華やかな美しい色彩で暮らしに花を咲かせる。2000年には「イヤーズプレートコンテスト1999」にて銀賞を受賞。youtubeやインスタグラムなどのSNSを駆使し、積極的に情報の発信も行っている。

●プロフィール 尼崎市出身、同市在住。ヨーロッパのフォークアートにも興味を持ち、オランダのアッセンデルフトやデルフト焼きなどの技術も修得。数多くの教室で講師として活動

ピンダローペンで描いた漁師のバスケット

丹羽名甫 墨アート

niwa2

Streaming with – For tomorrow –
流れて — 明日に —
38cm×29cm / 2011

墨と油彩を融合した「墨アート」の魅力を発信

 シンプルで大胆、そして繊細な筆遣いー。インパクトある美しい作品は、一目で観る人を引き込む力強さがある。日本の書道と西洋の油彩を融合させた「墨アート」という新しいスタイルを確立。金・赤・青など、墨と共に配される特徴的な色の表現は海外からも注目され、多くの芸術祭や展覧会へ出展、受賞歴も多数。

●プロフィール 油絵や水彩画を経て、前衛の「書」の創作に取り組み、1990年よりアート活動を開始。日本独自の美意識が反映された作品を発表し、国内外で高い評価を受ている。英国王立美術協会・名誉会員

本堀雄二 彫刻

捨てられるものから崇められる仏像を制作

お菓子の空き箱やラップの芯など、日常生活の中にある使い古されたものを再生し、仏像を制作している彫刻家の本堀雄二さん。芦屋市谷崎潤一郎記念館にて、2021年1月31日(日)まで展覧会「曼陀羅華と仏像」を開催中。捨てられるものが崇められる仏像として再生されている。

●プロフィール 1958年、神戸市生まれ、同市在住。愛知県立芸術大学の彫刻科を卒業後、長年に渡り、段ボールやペットボトルなど、身近にある使い古された素材を使い、仏像を制作。香港や静岡でも個展を開催するなど、国内外で活躍
honbori2

11面観音
DM、チラシ、ラップの芯

𠮷岡充 水彩画

壊れたミゼットのある茅葺民家
(神戸市北区淡河町勝雄・2007年6月)

人との出会いを創作の原動力に

長年に渡り、変わりゆく関西の街並みを描き続けてきた神戸市在住の画家、𠮷岡充さん。2020年10月には2冊目となる作品集「𠮷岡 充 水彩画集 播磨と神戸と阪神と」を出版。その創作活動は絵画だけにとどまらず、蒔絵や仏像彫刻など多岐にわたる。現在は今年7月に開催予定の「アートホール神戸」での展覧会に向け、新作の制作に注力。2020年11月半ばには、年内で営業を終える東急ハンズ三宮店を描く𠮷岡さんの姿が見られた。


●プロフィール
画家、仏師・蒔絵師としても活躍。2019年には自身、2冊目となる画集を出版。約14年をかけ描いた「播磨77点」、「神戸90点」、「阪神69点」合計236点を収録。2023年1月19日(木)~24日(火)まで「アートホール神戸」にて展覧会を開催予定。