中世の歴史都市で迷宮散歩

「トレド」――スペイン、カスティーリャ・ラマンチャ州の都市で、かつての西ゴート王国の首都。
ここまで聞いても歴史に疎い僕は何だか良く分からない。

中世ヨーロッパではいろんな宗教勢力の対立による、征服、建国、滅亡が繰り返され、それが建築様式にも色濃く反映されてきた。
だから異なる宗教の建築様式の混じった建物は基本的に存在しないのだそう。
でも、ここトレドは複数の宗教が融合した独特の建築様式の建物が残されていて、「街全体が博物館」と呼ばれている。

中世ヨーロッパの歴史が好きな人にとってはある意味、一度は訪れたい”聖地”らしい。
そうまで言われたら、俄然興味が湧いてきた。

よし、中世ヨーロッパのテイストが残るトレドに行ってみよう!
でも、歴史は全然詳しくないのだけれど…。

・時間が止まった博物都市
・路地裏は迷路のよう
・坂道の回廊にも歴史が
・商店街も落ち着いた雰囲気

日本からトレドに行くには、まずは国際線でスペインの首都マドリードまで行く。
トレドはマドリードの南約70㎞にあり、マドリード・アトーチャ駅から電車で約1時間30分、バスでも同じくらいで着く。

トレドが首都だった西ゴート王国は最盛期にはイベリア半島の大半とフランス南部を支配する程の勢力を誇った。
中世にはイスラム教、キリスト教、ユダヤ教が交錯し、それぞれの痕跡が街全体に残ることが「街全体が博物館」と呼ばれる所以だとか。

時間が止まった博物都市

トレドは東西南をタホ川に囲まれた地形で、東西約1.5㎞、南北約1㎞の旧市街が1986年ユネスコの世界遺産に登録されている。

旧市街全体が良く見渡せるタホ川の南にある「ミラドール・デル・バッジェ」の展望台からの眺め。
タホ川が堀のようになって、まさに自然の要塞。
ここからの夜景もオススメ。

左に見える尖塔がカテドラル、中央右のお城のようなのがアルカサル。

カテドラルと呼ばれる「トレド大聖堂」。

古代ローマから、西ゴート王国、ウマイヤ朝、後ウマイヤ朝、そしてスペイン黄金時代の2000年にわたる文化痕跡の残るトレドの中で、ゴシック様式とムデハル様式が共存する代表的な建築。

ムデハル様式とは、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教、それぞれの建築様式が融合したもので、スペインとポルトガルで発展した。
建物の壁面に幾何学模様を施すのが特長らしいけれど、確かにイスラム教のモスクのようにも、キリスト教の教会のようにも、ユダヤ教のシナゴークのようにも見えるから不思議だね。

カテドラルは266年もかけて建設され、1493年に完成した。

さすがにスペイン・カトリックの総本山だけあって、中の祭壇は大変豪華。
もちろん、聖堂内部にある彫刻や絵画などどれを取っても、そのスケールに圧倒される。

奥の尖塔が4つある建物が「アルカサル」で、古代ローマ時代、ウマイヤ朝、カスティーリャ王国時代などに要塞として使われたもの。
スペイン内戦の際に破壊されたけど、その後修復されて現在は軍事博物館として公開されていて、古代ローマから中世に至る武器、軍服、模型など人類の戦争の歴史を見ることができる。

路地裏は迷路のよう

レンガ色の建物が密集する、世界遺産の旧市街の中を歩いてみることにしよう。

遠目にも家が密集しているのが分かったけれど、実際に街の中を歩いてみるとほとんどの路地が馬車が通るのも厳しいかなと思えるくらい狭い。

でも、何百年も前からこの風景は変わらないのだろうなと思うと悠久の時の流れを感じるね。

時間がゆっくりと流れる街中は、自然と歩き方もゆっくりになるような気がする。

上のバルの看板も出しゃばり過ぎず控え目な感じで好感が持てる。

所どころにある道路案内板があることで、からくも迷子にならずに済んだよ。
直進すると「カテドラル」、右方向へ行くと「エル・グレコ美術館」と書いてある。

ちなみに、エル・グレコはルネサンス期にトレドで活躍した画家で、美術館は彼の住居を再現したもの。
美術館以外でもカテドラルの中に彼の作品の「聖衣剥奪」や「十二使徒」が展示されている。
さらに、エル・グレコの作品で見逃せないのが、サント・トメ教会の「オルガス伯の埋葬」。
時間があったら是非寄ってみてね。

坂道の回廊にも歴史が

旧市街は結構高低差がある。
カテドラルやアルカサルは丘のほぼ頂上に建っているけれど、多くの建物は坂の斜面に建っている。

斜面なので当然、そこにはスロープか階段がある。
歩いていると階段にも壁面にも、また建物で切り取られた空にも歴史を感じるね。
細い道と坂道は、日本の古都「京都」にも通じるものがあるような気がする。
それと同時に「歳を取ったらこの坂道や階段は膝に堪えるだろうな」などと要らぬ心配をしてしまうのは僕だけだろうか。

時々、こんな金属のプレートが建物の壁に埋め込まれているのを見た。
右部分は家系を示す紋章のように見えるし、左は天使が酒を壺から注いでいるようにも見える。
その建物の所有者の目印なのかなと思うけれど、良く分かりません、すみません。
ただ、埋められた周りの壁面に比べてこのプレート部分だけ異様にテカテカしている。
まさかここを擦るとご利益があるとか…そんなことないか。

かなり急な坂道を上った先にあった円筒形の建物にもムデハル様式がはっきりと分かるね。
ムデハル様式は複数の宗教建築の融合だけど、イスラムの支配期間が長かったためどちらかと言うとイスラムのテイストが基本にあると言えるね。

レコンキスタ(イスラム勢からイベリア半島を取り返すキリスト勢による国土回復運動)によってイスラム勢が退いた後もスペインに残ったムーア人が造り上げたのがムデハル様式のルーツなのだとか。

商店街も落ち着いた雰囲気

旧市街の歴史散策の後は、商店が集まるエリアも覗いてみるね。

レストランや土産物店が並んでいるけれど、喧騒や雑踏とは無縁。
ここもゆっくりと歩きながら自分のペースで好みの店やお目当ての商品を探すこともできるよ。

商店街を歩いていたら窓に張った大きなポスターかと思ったら、壁にビルトインの清涼飲料水の自動販売機だった。
日本で見るような普通の自販機をドンと置くよりもずっとスマートな感じだね。

ただ、周りのコンクリートの施工がかなり雑だけど、それはご愛敬ってところかな。

喉が渇いたのでバルに立ち寄ってセルベッサ(ビール)を軽く1杯。

カウンターにスイカがデンと置いてあるけど、スペインではスイカは冷やさないで食べるのか?などとつまらないことを思いつつ、昼間の1杯は旨いねぇ。

ちなみに、トレドの他の見どころは…タホ川を渡って旧市街に入れるのは東側のアルカンタラ橋と西側のサンマルティン橋の2カ所のみ。
有名なプエルタ・デル・ソル(太陽の門)は北側にある。

また、教会は沢山あるけど、現存するシナゴークはトランシト教会とサンタマリアラブランカ教会の2つのみ。

さてと、もう少しムデハル様式の聖地を散策しようかな。
有名な建物だけでなく、街全体をゆっくりと散策して、心で歴史散歩をしみじみと味わうのが一番かな。

おっと、その前に、セルベッサもう1杯いっちゃおうかな!

なんちゃって。