人間も地球上に住む動物なのだ

ケニアの首都ナイロビから車を走らせること約5時間。マサイマラ国立保護区に着いた。

ケニアにはアンボセリ、ナクル、サンブルなど多くの動物保護区があるが、その中でもここマサイマラは動物の種類も数も随一だ。いろんな動物に会えるのを期待して、暫くここに滞在することにしよう。

動物達と暮らす毎日

マサイマラはサバンナと呼ばれる草原地帯。

初めてこのサバンナを前にした時、僕が感じたのは「ああ、これはサバンナだ」という感覚だった。何故か分からないけれども、想像していたとおり、いやそれ以上にサバンナを実感した。

チーターの親子に出会った。「出会った」というのは実は正確でなない。

サバンナではヌーやシマウマはどこにでも居るが、ライオンやチーターなどはそういつでも見られるものではない。だからサファリカーのドライバーは相互に無線で連絡を取り合い、動物を見つけたらすぐに知らせが来る。

その結果、ライオンやチーターの周りには時に10台近くのサファリカーが集まることもある。ただ、動物に近付き過ぎないようにルールがある。

ライオンやチーターは夜に狩りをするので、暑い昼間はこのように木陰などで寝ている。

マサイマラ国立保護区の広さは大阪府と同じくらいある。だからいくら動物の数が多いとは言え、見たい動物を探すにはそれなりの距離を走ることになる。

象、横断中。

一見大人しそうに見える象だけれど、機嫌が悪い時には車に向かって来ることが何度もあった。迫力があるというよりも、マジで怖い。

ちなみに小型飛行機が上空をたまに飛んでいることがある。ドライバーに聞いたら遭難者の捜索なんだとか。観光客の中にはレンタカーで観光する人もいるが、サバンナの中はどちらを向いても同じような風景で道に迷うらしい。それで日が暮れるとよほど土地勘が無いと宿に帰ることはできない。そうして、年に何人かは本当に遭難するそうなので、ここではレンタカーはお勧めできない。

これはグラントシマウマ。もう少し縞が細いのはグレビーシマウマ。

シマウマの縞模様の理由は、最近の研究では害虫を寄せ付けないためだとか。特に血を吸うアブやツェツェバエはシマウマだって嫌いだけど、実際に調査すると縞の無い普通の馬とシマウマを比較したら、シマウマの方が皮膚に付く虫が少なかったということなので本当みたい。

ちなみに、ツェツェバエはアフリカ睡眠病のウイルスを媒介するので要注意。

これはマサイキリン。

私たちが日本の動物園で普通に見かけるのはアミメキリン。ちなみに、首の長さに関係なく、首の骨の数は哺乳類ではみんな同じとか。

オグロヌーの群れ。

ヌーの和名「ウシカモシカ」が示すように、たてがみと尾は馬、角は牛、ひげは羊と色々な動物を繋ぎ合わせたような見てくれだ。英語名も「ワイルドビースト(野生動物)」と至って適当である。

150万頭ものヌーの大群がマラ川を渡る「グレートマイグレーション」は有名だ。マサイマラと隣国タンザニアのセレンゲティ国立公園をシマウマやガゼルなども引き連れて1600㎞の大移動だ。

ただ、川を渡るのは命がけで、毎年6000頭ほどが溺れ死ぬらしい。ワニは喜んでいるかも。

ライオンのペア。しばらく粘っていたら、こんな変顔をしてくれた。ちなみに、群れの英語表現は動物によって違うそうな。

ライオンは「プライド」。象は「ハード又はパレード」、キリンは「タワー」、シマウマは「ジール」、魚は「スクール」と言うそうだ。

セグロジャッカル。オオカミに似ているけれどオオカミより耳が大きい。

ネズミなどの小動物を襲うが、主には他の猛獣の食べ残しを夜間に漁る。

トムソンガゼル。まだ若いので角が小さい。

足が速く、最高で時速100㎞近くに達する場合もあるようで、速さではライオンは敵わないようだ。

高台にあるロッジからサバンナを見渡すのは本当に気持ちがいい。

ハイラックスたちが居るのは、夕べ焚火をした暖炉の淵。赤道直下とは言え、標高は1400mほどなので朝は結構寒いくらいなので、ハイラックスたちも暖を取りにきているようだ。

ちなみに、マサイマラの「マラ」とはマサイ語で「草原の中に森が点在している所」という意味。なるほど、ここから眺めるとその意味が良く分かる。

マラ川にあるヒッポプール。「ヒッポ」とはカバのこと、つまりカバのたまり場だ。

川の中に岩のように見えるのがみんなカバ。カバの皮膚は日差しに弱いので、暑い日中はこのように水の中に浸かって過ごす。

このマラ川にはワニも沢山いるが、カバを襲うのは見たことが無い。カバやゾウ相手だと踏み潰されると怖がっているのだろうか。

小さな水たまりにいたカバに近づいてみると、フンを飛ばして威嚇してきた。画面左がフンだらけになっているのが分かるだろうか。

暑い昼間は水から出てこないカバだが、夜は盛んに動き回る。だから夜間に出会うと大変危険らしい。事実、対動物で人が命を落とす一番の相手はライオンでもハイエナでもなくカバだということ。夜は気を付けよう。

ハゲワシの群れ(英語表現ではフロック)。

みんな同じ方向を向いているのは、ライオンが食事中の獲物を狙っているから。

ちなみに、「ハゲタカ」とはハゲワシとコンドルの総称で、ハゲタカというと言う鳥はいない。また、剥げているのは獲物に頭を突っ込んで食べるため、頭部に血が付くのを最小限にするためだそう。

なお、ハゲ剥げと言うが実際には頭部に短い毛があり、つるっ剥げという程ではない。念のためハゲワシの名誉のために付け加えておく。

公園レンジャーのパトロールカーの上で寛ぐバブーン(アヌビスヒヒ)。

顔がエジプトのアヌビス神ににているからこの名前だそうで、体毛の色からオリーブヒヒとも呼ばれるそうだ。バブーンは雑食性なので畑の作物も狙うため、地元ではかなり嫌われているみたい。

地元ではレオタードリザードと呼ばれているトカゲの仲間。確かにレオタードを穿いているように見える配色だ。

野生動物以外にも見どころ色々

サバンナには野生動物の他にも興味深いものは沢山あるぞ。

これはキリンの好物であるアカシアの実。

動物に食べられないようにトゲをいっぱい付けているけど、キリンは物ともせずに食べてしまう。キリンの舌に実際に触ると丈夫なタワシのようで、これならアカシアのトゲも平気のよう。

ちなみに、アリがこの実の中に巣を作ることがあるが、その巣の穴が風によってヒュ~ヒュ~と音を立てることがあるため、ホイッスルツリー(笛の木)とも言われるそうだ。

マサイの村のおばさん達。赤い布をわりと良く使っているがマサイでは赤い布を身に付けているとライオンに襲われないと信じられているらしい。そのため狩りに出る男達は多くが赤い布を身に纏っている。

ちなみに、マサイの家は牛のフンでできている。中はほぼ真っ暗だが、結構涼しく快適。

希望すればサバンナの真ん中での朝食もできる。

テーブルをセットし、シェフがソーセージや卵をその場で焼いてくれる。遠くにキリマンジャロを眺めながらのひと時は究極の贅沢かも知れないね。

これは国境の標識。

手を広げているのが国境のラインで、手前がケニアのマサイマラ国立保護区で向こう側がタンザニアのセレンゲティ国立公園。動物が行き来するのでフェンスなどを設置することはできない。マサイマラとセレンゲティを足すと四国と同じくらいの広さ。

なお、ここへ来たら誰もがあの標識に登って同じポーズをするらしい。

少し高台に登ると、タンザニアからケニアを通ってエジプトまで続く7000㎞にも及ぶグレートリフトバレー(大地溝帯)と呼ばれる巨大な谷を見ることができる。

ここが大地が生まれる場所で、数百万年後にはここでアフリカ大陸が分裂するだろうとも言われている。また、ここが人類発祥の地とされ、ここで誕生した人類が世界中へ広がっていったと考えられている。

多くの野生動物に囲まれた人類誕生の地を前にして、遥か太古と遥か未来に想いを馳せる僕だった。

なんちゃって。