バオバブの並木道にて

アフリカ大陸からモザンビーク海峡を隔てて、南東に400㎞程離れたところにあるのがマダガスカル。グリーンランド、ニューギニア、ボルネオに次いで世界で4番目に大きな島だ。太古の昔に他の大陸と切り離されたため、ここにいる動植物の何と80%以上は固有種という。 今回はマダガスカルの植物の中でも、特に有名なバオバブの木に会いに来た。

並木道は何とも不思議な光景

モロンダバまでは首都アンタナナリボから軽飛行機で1時間のフライト。飛行機は地上の人や動物がはっきり見えるくらいの低空で飛ぶので、高い所が苦手な僕にとっては結構下を見るのが怖かった。国際線のようにうんと上空を飛ぶなら、諦めも付いて安心なんだけどね。 バオバブの森から登る太陽。何とも不思議であり、幻想的でもある。 ちなみに、アンタナナリボからここモロンダバまでバスで来る方法もある。タクシーブルースという15人乗りの小型バスで、料金は飛行機代の1/10くらい。ただし18時間位掛かる上、時刻表通り出発することはまず無いらしい。 利用するのは主に地元の人達で、観光客の利用はめったにない。座席はかなり窮屈な上、治安の面からもお勧めはできない。 時間と共に表情を刻一刻と変化させていくバオバブの木。 その特異な形状が「木を一度引き抜いて、その後上下逆さまに植えたよう」という表現がピッタリと実感する光景だ。
バオバブの木の前を通り過ぎる牛車。荷台には家族だろうか、のどかそのものと言った感じ。 この風景が見たくてここまで来たのだ!世界的にも珍しいバオバブの並木道。 このあたり、周りを見渡してもバオバブの木以外の木はほとんど無い。しかし、昔はこの辺りは熱帯雨林で、多くの植物が繁っていた。その後、人々が住むようになると木は燃料などとして伐採されていったが、信仰の対象だったバオバブの木だけは切られなかったのでこのように残ったのだそう。 地球上にある9種類のバオバブの木のうち、6種類がマダガスカルの固有種。(諸説あり) まさにバオバブはマダガスカルを代表する木のひとつと言えるだろう。 車の砂ぼこりが立っても、バオバブの並木道は絵になる。11~4月がマダガスカルの雨季。 僕が訪れたのは乾季だったのでこのように乾いているけど、雨が降ると道路はぬかるんでしまうらしい。 でも、雨のバオバブの並木道もステキかもね。

長距離移動は飛行機がお勧め

マダガスカルの道路の舗装率は約30%(2019年)。 この道はまだいい方で田舎へ行く程、道路は悪くなっていく。だから、日本では高速道路3~4時間で行けるようなところへも丸1日も掛かってしまう。 橋もこのように1車線の所がある。もちろん相手がいれば渡り切るまで待つしかない。 トラックの左右がギリギリなので、おじさんが誘導していた。こんな風景を時々見かけた。こんなことも陸路移動で時間が掛かる原因のひとつだ。 マダガスカル航空の国内線小型機。アンタナナリボ国際空港以外はだいたいこんな感じ。料金が高くても長距離移動は早くて安全な飛行機が一番。そのため国内の飛行機での交通網はかなり充実している。 ちなみに、鉄道はあまり路線が発達していない上、主に貨物輸送で旅客には使い勝手はよくないらしい。 滑走路を牛がゆっくりと横切っていく。ところによっては滑走路と鉄道の線路が交差している空港もあるとか。 ちなみに、マダガスカル航空の飛行機の尾翼のデザインは「タビビトノキ」を図案化したもの。 タビビトノキの葉は東西に大きく広がる、つまり一列になった葉が必ず東西を示すため、旅人が方向の目安にしたところから付けられた名前だそう。

やっぱり明るい笑顔がいいね

出会った人、皆の笑顔が印象的だった。 バオバブの並木道で出会った少年。バオバブのようにシュッとしていた。 途中で出会った家族と思われる牛車。みんな笑顔で手を振ってくれた。牛は紅白ならぬ白黒の二頭立て。 市場にいた親子。肝っ玉母さんのような笑顔がいいね。でも、子供の上着は少し大き過ぎるみたい 弟の子守をしながらお米を買いに来ていた少女。 声をかけたら気さくに笑顔を返してくれた。ちなみに、マダガスカルも日本と同じ米が主食の国で、1人当たりの米の消費量は日本の2倍あるとのこと。 マダガスカルの一般家庭に食事時に訪ねると「Masaka ny vary!(マサカニヴァリ)」つまり「ごはん食べていきませんか」と言われるそうだ。 これは定型の挨拶で、よく京都などで訪問の帰り際に「ぶぶ(お茶漬け)でも召し上がっていって」と同様、本当に食べると嫌がられるので、くれぐれもご注意を。 モロンダバに5日間いたが、毎日バオバブの並木道を見ても飽きることはなかった。 バオバブの木は、サン=デグジュペリの「星の王子様」に出てくる。その物語の中でキツネが王子に「大切なものは目に見えないんだよ」と言う場面があるが、心でものを見るということを大自然の中でじっくり考えるのに必要十分な時間だったなぁ。 なんちゃって。